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今回は魚の血や内臓の画像が多く登場します。
この記事のテーマにこれらを排除する事は
沿わないと判断しそのまま
掲載しています。ご留意ください。
    
壮大にして非常に奥の深いテーマです。
私も釣りをするようになって特に
意識するようになり、船上での処理も含めて
検証を繰り返しています。
そもそも熟成とは何なのか?
どういう工程を経て行うものなのか?
まずはこちらをお読みください
「魚の鮮度を科学する」

http://www.q.turi.ne.jp/aji/index_sp.html

株式会社ルミカさんが運営する
九州釣り情報の中の記事ですが、
科学的な見地から熟成と腐敗について
書かれていてその内容は
魚全般に言える事であり、非常に秀逸です。

今回は活かしの養殖のカンパチを使って
前述の記事の内容をまじえながら
熟成を前提にした処理を実践して
いきたいと思います。
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①脳締め
コチやフグなどの特殊系を除いて大体の魚は
側線の延長上とエラから頭側の線の
交差する所にあります。指で刺している箇所です。
イケスから上げたり、釣り上げたりしてから
暴れさせると、ATP(アデノシン三リン酸)を
急激に消費させてしまいます。

※魚を美味しく食べる為に知っておくべき物質
ーATP(アデノリン三リン酸)とは?ー
筋肉の収縮や発熱に大きな役割を果たす
エネルギー源のようなもの。
生きている状態では消費しても呼吸を通して
また補充されるものですが、死んでからは
徐々に減少していき、枯渇すると死後硬直が
はじまる。締める時点でのその魚のATPの
含有量の差が死後硬直が始まるまでの
時間に関係し、ひいてはこれが魚の味、
そして熟成にも密接に結びついていきます。
ATPの含有量が消費されてない状態を
いかに維持しながら工程をすすめるのか。
という事が最大のポイントなんです。
これは熟成に限らず、すぐ食べる場合に
おいても言える事です。
わかりやすい例でいうと遊漁船で活かしこみの
イケスで活かしたまま帰港してから締めた魚が
そうでない魚と比べ断然旨いのは
釣りのやり取りの最中で消費されたATPが
イケス内でまた補充され、良い状態で
食べているからなんです。
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イケスで一晩ゆっくり休ませ素早く締めたカンパチ

②血抜きその1
脳締めを施した後は血抜きの工程です。
締めた後も自律神経である心臓はしばらく
動いています。そのポンプ作用を利用して
血抜きを行います。
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魚の脊椎部の下に動脈が通っているので
その部分だけを切ります。
画像のようにひっくり返して、脊椎部分の
動脈近くにだけ包丁を入れる。エラ全体を
切ってしまうと後の血抜きその2の工程で
やりずらくなるので注意してください。
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包丁を入れた後は常温の海水につけ
しばらく放血します。
途中頭の部分を振り洗いしながらそれを
促す。
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5分程で大分抜けました。持ち上げて
血が混じった海水の色に透明感が出る
くらいを目安にして良いと思います。

③血抜きその2
大方の血は抜けましたが、まだ動脈内と
毛細血管や血合い部分には血液が残っています。
その2でその残った血を取り除きます。
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尾側をヒレの生え際あたりで切り落とす。
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真ん中が脊椎で右の穴が動脈、左の穴が
神経です。
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先程のエラの切った部分にホースを入れ
水を流し込む。エラ部分を全部切ってしまうと
水が逃げてしまい、水圧をかけづらくなります。
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水圧によって身がパンパンに膨らみ動脈内から
残った血が出てきます。この時に血合い部分や
毛細血管に残った血液も一緒に排出されます。
熟成において血液は腐敗の原因になるので
②と③の工程を踏み完全に体内の血を
出し切らないといけません。

④神経締め
脳が死んだ魚は心臓と同様に脊椎も
まだ生きていてこれもATPを消費する要因に
なります。漠然と神経締めをすると良いという
知識を持っている方は多いですが、その本当の
理由は脳締めと合わせて処理をする事で
ATPの消費が抑えられ、死後硬直の時間を
遅らせる事ができ、その結果
鮮度の維持、味の劣化防止につながるからです。
ただし、やり取りに物凄く時間がかかったり、
上げてから暴れまくった末に処理をしても
その時点で大分消耗しているので効果は
落ちます。

頭側からやるやり方もありますが、
わかりやすく今回は尾側から進めていきます。
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針金による神経締めでも
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ちょっとわかりずらいですが津本式による
水圧による神経締めでも
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津本式はわかりやすく神経が出ます。
効果は両者とも同じです。

⑤予冷
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①②③④の一連の工程で一時的に上がった
魚の体温を氷海水に漬けて下げる。
これの目的も体温が上がった事によるATPの
消費を抑える事にあります。
注意すべきはその温度と時間。
冷やしすぎは厳禁です。
冷やしすぎて目が白くなるような状態になると
魚の身は凍っています。厳密に言うと
シャーベット状の半凍りになっています。
これは組織内に氷結晶を発生させ、細胞膜を
壊す原因になり、味に悪影響を与えると
思っています。自分の検証では5~10度の
温度帯で魚体の大きさにもよりますが4,5分で
その効果は得られると今のところ思っています。

⑥エラと内臓の除去
脳締め、血抜き、神経締めをし、それによって上がった
体温を予冷によって下げる工程の次は
エラと腹の中の内臓と血合いを奇麗に除去します。
これは先程の血抜きと同様熟成においての腐敗の
原因になるからです。
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エラの膜を切り、カマ下からお尻まで腹を割く
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エラと内臓をはずしていく。
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エラと内臓が外れた状態。
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ここからさらに血や汚れを落としていく
ササラなどがあると便利です。
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奇麗にとり終わった後
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もう一度全体を洗い、奇麗に拭き上げた後
お腹の中の血合い部分にペーパーを詰め
耐湿紙で覆いビニール袋に入れて中の
空気を極力抜く。
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そしてクーラーボックスに入れて氷をあて
冷蔵庫で保存。
これからATPが減少し、枯渇すると死後硬直が
始まり、細胞内の酵素の働きによりイノシン酸が
増加していく。これが熟成です。
熟成の段階で死後硬直がとけると
今度は内外部にいる細菌の働きにより
腐敗の方向に向かい始めます。
血液や内臓の完全な除去をする事でこの細菌
が繁殖する要素を取り除き腐敗に向かう
までの時間を限りなく遅らせる事で長時間の
熟成に耐えられるようになるんです。
今回は処理してから10日間で
試食してみる事にしました。
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10日後のカンパチ。
5日目に一度だけ体表を水洗いして耐湿紙で
巻きなおしました。
匂いは無臭です。腐敗臭はもちろん、
魚臭いなども皆無。
菌の繁殖が押さえられている証拠だと思います。
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熟成においては体表の鱗はついていた方が
良いです。鱗をとった物と同条件で
比較検証しましたが、食感に違いが出ます。
鱗なしの方が身が伸びる時間が早いと
感じました。
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いいですね、非常に奇麗です。とても10日
寝かせた物とはおもえませんね。
正直この個体だともっと寝かせていいと思います。
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これは熟成の検証をやりだして気づいた事
なんですが、この皮目にある血合い部分。
ブリ程ではないですが、カンパチも空気に
触れていると一日も立てばこの血合い部分が
変色してくるんですが、処理を施した魚は長時間
変色が見られませんでした。恐らく血液を
完全に排除した事が要因だと思います。
うーん、興味深い。
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皮を剥くと皮目の上にうっすらと脂の層が
顔を出す。あー旨そう。
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その食感は損なわれる事なく、程よく脂が
全体にまわっていました。
惜しむらくはこの魚体であれば旨味のピークは
まだ先・・あと5日から10日は寝かせても良かったと
思います。
サイズや魚種、獲れる時期、さらには
個体差によっても変動するその旨味のピークと
食感とのバランスの見極めは
経験を積むことでしかその精度の向上は
難しいと思います。
だからこそ時間をかけて挑戦するに値すると
思いますし、面白い。
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食べるなら少しでも美味しく食べてあげたい・・
そういう事を考え実行できる環境に
身を置けている事を幸せに思います。


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